新刊案内:村岡到著『生存権・平等・エコロジー』紹介
来年2月刊行予定の村岡到著『生存権・平等・エコロジー――連帯社会主義の根底にあるもの』の「序にかえて」と「あとがき」を紹介します。
村岡到著『生存権・平等・エコロジー――連帯社会主義の根底にあるもの』
あとがき
前著『連帯社会主義への政治理論――マルクス主義を超えて』を著してから1年半、本書にはこの間に書いたものを集めた。最初の、生存権についての論文は、4年前に書いたもので、私の新しい社会主義論の出発点をなすものでもあったが、法(律)を主軸にした著作のためにため込んでおいた。ようやくその役目を果たすところまで歩んできたとも言える。
まず、初出を示すことにしよう。
・序にかえて――9・11特攻テロ 「稲妻」第338号=2001年10月
・<生存権>と<生産手段の変革> 『カオスとロゴス』第11号=1998年6月
・<ノモス>を追求する意味 『カオスとロゴス』第20号=2001年10月
・<平等>こそ社会主義正義論の核心 『カオスとロゴス』第21号=2002年4月
・<多様性>と<自由><平等> 「稲妻」第342号=2002年6月、第343号=同8月・<自然><農業>と<社会主義> 『カオスとロゴス』第22号=2002年12月
・『資本論』と農業 新稿
・<協議経済>の構想――協議生産と生活カード制 新稿
・梅本克己さんの時代的限界 『回想・梅本克己』こぶし書房、2002年
・広西元信さんを追悼する 『季報唯物論研究』第72号=2000年5月
どの論文もほとんど初出のままであり、補足すべきことは「本書収録時の追記」として記した。
それぞれの論文についてくわしく解題することはないだろうが、「<ノモス>を追求する意味」は、尾高朝雄の『法の窮極に在るもの』に触れたことが決定的な契機となって、これまでまったく知ることがなかった法(律)の大切さに正面から取り組んだ結果である。「<平等>こそ社会主義正義論の核心」と「<多様性>と<自由><平等>」はその延長上で、近年はやりの「正義論」とかみ合うことができたであろう。
「<自然><農業>と<社会主義>」については、これまた私にとっては新しい分野への挑戦であり、少し説明しておきたいことがある。農業の重要性について教えてくれたのは白井朗さんである。想えば、私が初めて新左翼の集会――1962年の参議院選挙に黒田寛一が立候補した「反議会戦線」の集会で、東京・池袋の豊島公会堂で開かれた――に参加したさい、最後に歌をうたったときに確かとなりで腕を組んだ人が白井夫人であった。そのころ、白井さんは「前進」(革共同の機関紙)の編集長で、前進社は池袋のロータリー近くにあった。63年に上京して東大病院分院に勤務し始めた私は、徒歩15分くらいの大塚に下宿していた。当時は小さな組織だったから、徒歩15分の前進社にもよく出入りしていて時どき白井さんと話すこともあった。だが、私は69年秋に国際反戦デーの闘いで逮捕・起訴・拘置され、74年頃にはいわゆる中核派を辞めたので、30年以上、白井さんとはまったく没交渉であった。再会後しばらくして、私が「農業は保護されるべきでは」と話したら、白井さんは即座に石渡貞雄さんの著作『農業保護産業論』を出版社名(農文協)と合わせて教えてくれた。高齢の石渡さんに手紙を送ったら、抜き刷りを返してくれた。そこに、私が提起している<誇競>と同じことが書いてあったので驚いた。
「<協議経済>の構想――協議生産と生活カード制」は、2002年10月に北京で開催された「国際シンポジウム:21世紀の世界社会主義」に主催者の中国社会科学院から招待されて参加するために用意したもので、友人に英訳してもらい印刷してシンポジウムに持参して配布してもらった。私の前の2冊を読んでいない読者のために収録することにした。
この国際シンポジウムについての報告と中国訪問の印象は以下の二つの小論に書いたが、私の報告への反応は、日本でのそれよりもはるかに良かった。<革命>がはるか彼方の課題である日本とは違って、中国ではともかくも「社会主義」にむけて模索しているからであろう。私に話しかけてきた若い研究者が、レーニンによって国外追放されたブルツクスを研究していて、別れるときの彼の力強い握手は今も鮮明にその感触が残っている。そのこともふくめて、中国の「社会主義」については改めて検討する必要を感じている。
「中国訪問による理論的反省と提起」 『カオスとロゴス』第22号=2002年12月
「グローバリゼーションの渦のなかの中国」『技術と人間』2002年12月号
この問題と関連して、日本共産党の不破哲三議長が8月末に同じ社会科学院に招待されておこなった講演「レーニンと市場経済」について次の論文を発表した。
「あるべき『レーニンと市場経済』論」 「稲妻」第344号=2002年10月
補論の「梅本克己さんの時代的限界」と「広西元信さんを追悼する」は、私の理論的歩みにおいて大きな影響を与えてくれたお二人への追悼である。
書名にも明示してあるように、本書は「連帯社会主義の根底にあるもの」を明らかにしようとしたものなので、現状分析や当面する実践的な諸課題については論及していない。もちろん、関心がないわけではないから、日本共産党の動向や今年5月に起きた瀋陽での亡命事件とか9月の日朝平壌宣言などについてはその都度、論評してきた(「稲妻」や私のホームページ参照)。とはいえ、私はまだ日本経済の現状について正面から勉強したことはない。本書をもって、<社会主義論>については原理的・基礎的な問題は一応はっきりさせることができたと考えているので、来年はいよいよ日本経済の現状について学びたいと計画している。
前著『連帯社会主義への政治理論』については、次の書評を得ることができた。
・西川伸一 「政治の多元主義的把握への野心的試み」『QUEST』第15号=2001年9月
・斎藤日出治 「法の確立にもとづく社会主義像」「ACT」第 号=2001年9月10日
・島崎 隆 「柔軟で説得力ある政治理論の試み」『カオスとロゴス』第20号=2001年10月
・村瀬大観 「 」東京唯物論研究会『唯物論』第76号=2002年12月刊行予定
また、塩沢由典さん(生年が同じであった)からは直接この本についてということではないが、彼の新著『マルクスの遺産』(藤原書店、2002年)で過分な評言をいただいた。気が滅入る時がないわけではないが、高い見識を保持する、政治的な立場が異なる方からの好意ある評価はなににも増して励ましになる。
私は来年、還暦となる。いまだその実感は全くないが、17歳、高校2年生のときに新潟県長岡市で60年安保闘争のデモに参加したことが、私の意識的な人生の出発点となった。まだ人生を回顧する時ではないと思うが、さまざまなことが走馬燈のように想い浮かぶ。さまざまな人にお世話になった。それぞれに感謝したい。
「新老人」なる言葉も生まれている時代だから、「もう一仕事を」と考えている。この小さな本についてのどんな感想でもよいからぜひ聞かせていただきたい。近年はやりのホームページも開設してあるので、見ていただきたいし、応答にも期待している。
「社会主義への討論の文化を」――このペレストロイカ期の呼びかけは、ペレストロイカの挫折にもかかわらず、人類の未来を遠望するなら、なお耳に届くはずである。
「社会主義への討論の文化を」――このペレストロイカ期の呼びかけは、ペレストロイカの挫折にもかかわらず、人類の未来を遠望するなら、なお耳に届くはずである。
2002年11月吉日 村 岡 到
序にかえて
この著作は、『協議型社会主義の模索――新左翼体験とソ連邦の崩壊を経て』(1999年、社会評論社)、『連帯社会主義への政治理論――マルクス主義を超えて』(2001年、五月書房)に次ぐ、私の社会主義論である。前著との間に、2001年9月11日の「特攻テロ」が勃発した。この衝撃的な歴史的事件をまたいで新著を世に問うからには、この事件について何を感じ、いかに対応したのかを明らかにすることは当然の責務であろう。そこで、事件直後に発表した論評を「序にかえて」全文再録することにした。本書に収めた諸論文の底を貫く、21世紀の現実にたいする私の基本的な姿勢も同時に表明されているからである。
読書中に、痛烈な響きをもつ言葉に出会うことがある。「一般の生活の中に取り入れられないような見解など、何の役に立つだろうか?」。この言葉は、ドイツのフィヒテが1793年に『フランス革命論』の「はしがき」に記したものである。この哲学者はまたこうも言う。「いやしくも著述家としての義務を知り、それを愛しているほどの者なら、自分の意見をそのまま読者に信じさせようなどとは決して思わずに、ただそれを読者の検討に委ねることで満足するはずである。総じてわれわれの教えは、読者の自発的な思索を喚び起こすことを目的にしなければならない」(フィヒテ『フランス革命論』法政大学出版局、1987年、7頁、12頁)、と。この小さな本もそのように読まれることを願う。
× × ×
以下は、「9・11テロ「報復」ではなく<反省>を」既発表 省略
この本の宣伝文
ソ連邦崩壊後の思想的崩壊状況に抗して、『協議型社会主義の模索』と『連帯社会
主義への政治理論』によって、従来のマルクス主義の通説を根本的に切開することを
通して、新しい〈社会主義像〉を提示してきた著者による、さらなる理論的探究。近
年話題の「正義」論に鋭角的に問題提起。さらに〈農業〉〈エコロジー〉をも真正面
から追求し、社会主義論の根本に位置づける。
目 次
・序にかえて
―9・11テロ「報復」ではなく<反省>を
・<生存権>と<生産手段の変革>
・<ノモス>を追求する意味
・<平等>こそ社会主義正義論の核心
・<多様性>と<自由><平等>
・<自然><農業>と<社会主義>
・『資本論』と農業
・<協議経済>の構想――協議生産と生活カード制
<補論>
・梅本克己さんの時代的限界
・広西元信さんを追悼する
予価2800円 2003年2月刊行予定
白順社
東京都文京区本郷2-4-13
なお、11月25日に、5月7日にスタートした私のホームページのアクセスが1万件
を越えました。
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