村岡到:積極的打開策はなし――共産党第23回党大会について 2004.1.19
1月13日から17日まで、日本共産党第23回党大会が伊豆の党学習会館で開催され、約1000人の代議員が参加した。大会は、43年ぶりの綱領改定を決定し、党4役全員の再選を含む新中央委員会を選出して終了した。
憲法を蹂躙して陸上自衛隊の先遣隊がイラクに派兵される(1月16日)、危険な情勢の展開の中で、共産党がイラク派兵反対・憲法改悪反対の立場を堅持し、サービス残業の不当性を追及する闘いの先頭に立っている(愛知県の代議員の発言、参照)こと、社会主義をめざしていることについて、私たちは積極的に評価する。昨年11月の総選挙での左翼の敗北・後退によっていまや衆議院には480議席中、改憲反対を表明している党は共産党(9議席)と社民党(6議席)しかなくなってしまった。このことは、院外の大衆闘争の重要性を示すとともに、このわずか15人の活動の貴重さ・重要さを意味している。その意味でも、私たちは共産党の動向を注視し、彼らがさまざまな闘いの先頭に立つように促さなければならない。共産党自身も、高い基準からすれば不満は残るとはいえ、脱皮のために努力している。したがって、私たちの共産党批判はいつにも増して内在的であることが求められている。この立場から、この大会に現れた共産党の現状、彼らがぶつかっている問題について簡単に明らかにしたい。
深刻な党勢の後退と高齢化
まず、党勢の現状について、志位和夫委員長の報告によれば、前大会(2000年11月)から党員は「43000人の新たな入党者をむかえ、403793人」となった。「赤旗」読者は、「前大会時の200万から27万人後退して173万に」1割以上減少した(前大会での党員数は40万余だった)。不破哲三議長自身が「長く惰性のように続いてきた機関紙読者の後退」と言わざるを得ないほどである。決定文書の読了については、最近の中央委員会決定の読了数字をあげないで、「この間、大会決定の読了が3割から4割」とだけ示した(「この間」とはいつのことか?)。党員の階層分布や年齢分布についてはまったく触れない(以前の大会では数字をあげることもあった)。しかし、党員の高齢化が急速に進んでいることは明白である。開会にさいして不破は前大会からの3年間に9699人の党員が死亡したと追悼した。「周りは60代ばかりで、支部で20代の党員は私一人だけ」とある代議員が語っている(「朝日新聞」1月18日)。志位は「結語」で、大会では「若い世代の生きいきとした姿が輝いた」と冗舌しているが、新しく選出された常任幹部会(21人)の平均年齢は何と60歳である(小泉内閣は59歳)。129人の中央委員にはまたも30歳代は一人もいない。老人党とは言えないが、そこに接近しているとは言える。
大会は、43年ぶりの綱領改定を決定した。改定案が出されたときに論評したので、ここでは次のことだけ指摘する。不破は「結語」で62箇所も修正したと説明しているが、彼自身が言うように、主要には文章表現上の補正だけである。とくに第5章「社会主義・共産主義の社会をめざして」については2箇所補語しただけでまったく変更しなかった。「市場を通じた社会主義」の問題にはまったく触れず、そのゆえに、大会を報道した「赤旗」ではこの言葉が消えてしまった。代議員の発言でも「生産手段の社会化」については何人かが肯定的に言及したが、「市場経済」について話す者はいなかった。
天皇制の問題については、出された批判に一応は答えているが、「二つの敵論」に関連する重要な問題については逃げてしまった。自衛隊問題については、前大会で強調された「自衛隊の活用」はまったく姿を消した。マスコミは相変わらず「天皇制と自衛隊を容認」と書いているが、誤認にすぎない。
不破は「報告」で、「日本は……現状では『君主制』でも『共和制』にも属さない国」と説明し、やがて「民主共和制に前進する」と述べたが、新綱領で新しく取り入れた「民主政治」とはいかなる関係にあるのか、不明である。「民主政治」とは「君主制」でも「共和制」でもない何かなのか。「共和制」と「民主共和制」とはどこが違うのか。不破が「政治的支配と経済的支配」との違いに着目するようになったのは大きな前進であるが、さらに明確にすべき問題が残っている。この点での不明確さゆえに、綱領改定をめぐる党内討論でもこの点が焦点にならなかったのである。「生産手段の社会化」についてはそれなりに議論になったことと比べてみよ。
「ぶっつけ本番」の党勢拡大案
大会の特徴は、「国際情勢」「国内情勢」の分析がきわめて手薄なことである。そもそも「国際情勢」「国内情勢」と明別して立てることなく、志位の「報告」では「内外情勢」とされて、もっぱらイラク戦争とアメリカ帝国主義の動向をフォローしているにすぎない(アメリカ帝国主義への批判と国連尊重の立場については、私たちは共通の立場に立っている)。そうなってしまったのは、綱領の改定に党の最高の頭脳が手一杯となったことと中央幹部の理論的能力の積年の衰退のためである。余りに現実と乖離した綱領を43年間も護持してきたいわば報いと言える。ともかく、綱領は改定したのだから、次はこの分野で新しい認識を獲得することが課題である。そこがはっきりしない限り、当面する闘いについても守りの姿勢に陥ることは必然である。
当面する闘いについて、「大会決議」では、改憲の危険な動向がいっそう強まっているなかで、第6章を「憲法改悪反対の一点での広い国民的共同を呼びかける」と設定し、改憲反対の闘いに重点を置くようになったことは当然であるが、とくに目新しい方針は何もない。例えば、参議院選挙で社民党などとの選挙協力――選挙区での共同候補作り――を提起する必要がある、と私たちは考える。
大会では、半年後に迫ってきた7月の参議院選挙にたいして、すでに昨年12月の10中総で確認した獲得目標の下方修正(比例区8から5に)にしたがって、大幅に修正した「大会決議」を決定した。この目標を達成するためには、総選挙での得票458万票を610万票に伸ばす必要がある。そのためとして、大会では「読者拡大で総選挙時比130%」の方針を提起し決定した。しかし、志位自身が「ぶっつけ本番で提案」と説明しているように、この提案は熟慮に踏まえたものではなく、守りの姿勢をカモフラージュするための思いつきでしかない。志位が発議したので、彼のやる気を殺いではいけないということで、決めたのであろう。
だが、問われていることは、なぜ党勢の後退が「長く惰性のように続いてきた」のかを明らかにすることである。そして、その克服のために新しい方針を具体的に提示することである。例えば、「赤旗」の抜本的紙面改善のために編集委員会のスタッフを倍増するというような大胆な方針が必要なのである。なに一つ新しい企画も方策もなしに、ただ単に「拡大しよう」と呼びかけたり決意するだけでは、読者拡大が不発に終わることはあらかじめはっきりしている。
「民主集中制」の忘却
さらに決定的に重大な問題がある。この大会では「民主集中制」がまったく姿を消したことである。不破も志位も一言も発言しなかった。これは異常である。言うまでもなく、「民主集中制」は共産党の組織のあり方を律しているはずの大原則である。3年前の前大会では「規約」の改定がおこなわれ、第3条に明記され、したがって詳しく強調していた。志位も「結語」で「民主集中制のもつ生命力がしめされ」たとその有効性を誇っていた。ところが、その「民主集中制」にまったく一言も触れないとは! 前述のように、「50万の党員」の達成を課題に設定したが、それらの新しい党員は、今度の大会の諸報告をいくら読んでも「民主集中制」に出会うことはない。
私は、この問題については、すでに昨年正月に『日本共産党の80年』が刊行された直後に、「民主集中制」の影が薄くなっていることに注意を喚起し、11月に著わした『不破哲三との対話』でも再説した(265頁、54頁)。規約に明示してあるからよい、という問題ではない。もともと、日本共産党にとって、「民主集中制」は党内で異論が起き、批判的党員が声をあげたときに、それをどうやって統制するかという必要に対処するための決めごとという性格が強かった。だから、党内の理論的能力は枯渇し、批判的党員も衰退したので、わざわざ「民主集中制」を持ち出すまでもないという事情も働いている。しかし、それだけではない。レーニン時代の原則が今日もなお有効であるはずはなく、そのことに不破などは気づいているからである。そのために前大会では「双方向型、循環型」(志位結語)などと形容もしたが、そんな小手先の弥縫策では間に合わないのである。
結論的に言うと、今や共産党は自らの組織を律する組織論を消失しつつあるということである。これはきわめて重大な問題である。早急に、市民を主体とする開かれた組織論を打ち出す以外に活路はない。そうしないと、組織は崩れ落ちるであろう。
今度の大会で、共産党が国際連帯を強調した点についてははっきりと肯定的に評価する必要がある。大会には14カ国、16の党から代表が参加した。また、上田耕一郎副委員長が代議員として発言し「東アジア共同体」の意義について述べた(「赤旗」でのEU特集、参照)。
なお、共産党は2002年に党本部の建物を85億円もかけて新築した(二期工事進行中)が、そのことにまったく触れないのはなぜであろうか。建設費にふれると党の財政問題に意識がリンクする可能性があるからかも知れない。私自身もこれまで触れたことはないが、党の財政問題が非公開であることもいずれ大きな問題となるであろう。
このように、共産党第23回党大会は、綱領を43年ぶりに大幅に改定したとはいえ、その意義を充全に語ることもできず、当面する闘いの方針は変わりばえしないもので、党勢の拡大を空叫びするだけで閉会した。綱領改定に踏まえて、次は、国際情勢・国内情勢について新たな認識を打ち出すこと、「民主集中制」に代る新しい組織論を提起することこそが活路なのである。
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