村岡到・どん底からの再出発を――共産党の敗退について2003.11.12


 11月9日投票の衆議院選挙の結果は、「自民伸びず民主躍進、与党絶対多数、政権維持」(翌日の「朝日新聞」1面大見出し)ということになった。公明党は議席で微増しただけでなく、自民党の得票の組織的支えとしてもその位置を上げた。他方、共産党は20議席から9議席へ、社民党は18議席から6議席へと激減し敗退した。これによって、衆議院での護憲の議席は、共産党、社民党などを合わせると39あったものが、わずか15となった。保守新党は選挙翌日に早々と解党して自民党に吸収された。また、選挙翌日に経団連の奥田碩会長は、来年から再開する政治献金について「自民党と民主党」にたいして行うことになるだろうとあけすけに語った。選挙期間中、マスコミがあげて騒いだ「マニュフェスト選挙」「政権選択選挙」「二大政党制」の世論誘導が、何を狙ったものなのか、あるいは民主党の本質が何なのかを改めて明らかにした。
 総選挙の全体的総括について、別に論評するつもりであるが、ここでは共産党についてのみ急いで一筆しておきたい。
 選挙翌日の「赤旗」1面の見出しは「総選挙大勢決まる 日本共産党比例で9議席」であった。確かに即日開票中で最終結果がなお判明していない段階で下版しなくてはならないという事情はあるにせよ、この見出しはまったく価値判断・評価を含まない間の抜けたものとしか言いようはない。となりに掲載された「選挙結果について」の志位和夫委員長の談話も貧弱で、その結びが「新たな決意をもってとりくむ決意です」と決意が2度出てくるうろたえたものになっている。編集部で文章を整える余裕も失っているのであろう。 得票をあげると、比例区では458万票:7.8%で、前回2000年の総選挙での671万票:11.2%から得票で213万票、得票率で3.4ポイント、約3分の2に激減した。きわめて深刻な事態である。
 10日付けの常任幹部会の声明では、「『政権選択』を争うという、政党地図の大きな変化のもとでたたかわれ」たがゆえに、「事態の真相を……伝えきるにはいたりませんでした」と反省している。前述のように、この点でのマスコミの巨大な影響は歴然ではあるが、自分たちの主張は正しいが選挙民への説得の時間が足りなかったというお定まりの反省では、財界やマスコミなどは次の選挙でも新しい作戦を英知を絞って繰り出してくるに決まっているのだから、「次もまた負けます」と言っているようなものである。
 なお、この声明では選挙制度の根本的問題点に触れることさえ忘れている。
 得票が約3分の2に激減したことは、いわば構造的後退と認識しなくてはならない。社民党がさらに激しく落ち込んだ(560万票:9.4%から302万票:5.1%へ)ことと合わせて、戦後日本の左翼勢力全体にとっての大きな問題が提起されたと考えるべきである。
 この事態にたいして早速、共産党が敗退したのは、6月の綱領改定案で天皇制容認――誤解――などのいわば軟弱な路線を取ったからだ、などという声があげられるであろうが、全くの見当外れである。では、天皇制絶対反対を叫ぶ者は得票を伸ばしたのか。問うも愚かなことだが、選挙制度の改悪も作用して、今回の選挙では新社会党すら候補者を立てられなかったのであり、新左翼諸党派は声すらあげられなかった。共産党の敗退を「ざまみろ」という姿勢で非難するのは、天につばするだけなのである。
 共産党がこの選挙で打ち出した「消費税増税と憲法改悪」に反対する立場はもちろん正しい。「イラク派兵」についても反対を明確にした。だが、問題は選挙民は、それらの問題だけを考えているわけではない。年金についても、雇用についても、治安の悪化についても悩んでいる。確かに、共産党は雇用問題については、サービス残業の廃止による160万人の新規雇用の拡大を提案した。年金についても主張してはいる。だが、それら全体をより関連性を明らかにして、対抗的ヴィジョンとして打ち出す点において、明確さと鋭さが足りない。
 私たちは、このいわばどん底を直視して、そこから再出発しなければならない。他人の欠点をあげつらうのではなく、自らができる範囲で、新しく問題を解明し、それらの関連性を明らかにし、運動のレベルでも協力を重ね、社会からの信用を回復しなければならない。
 よりトータルな新しい社会像を提起することこそが、左翼全体に問われているのである。そして、そのために協力しあう姿を分かりやすく示すことである。具体的には例えば選挙区で落選した土井たか子の兵庫7区で共産党が候補を降ろして土井への投票を呼びかければ土井は当選したであろう。見返りが仮りにないとしても、共産党がこのような柔軟な戦術を駆使すれば、「共産党は自分の党のことだけでなく、全体の利益を考えている」として、評価を高めるに違いない。
 なお、共産党が地方議会で4200人の議員を擁していることは、「地方の時代」の到来のなかで決定的に大きな力と意味を発揮するであろう。地方議会の選挙を小選挙区制にするわけにはいかず、ここでは共産党を崩すことはできないからである。

 <追記>
 私は今、『不破哲三との対話』を刊行し、次の課題として<賃金システム>について勉強している最中で、そこに集中したいので、上記の一文は不満足なものにすぎないが、「共産党への投票」を呼びかけたものとして、一筆した次第である。

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