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ここは管理人が読んだ本の書評を書いてあります。
アメリカ独立戦争(上・下)
友清 理士(ともきよ さとし)著
学研M文庫
読んで字の如く、アメリカ独立戦争の顛末について書かれた書。
アメリカ独立戦争というと、とかく独立の英雄ワシントンその他についてのみスポットライトが当たることが多いですが、この本は敢えて独立戦争前に行われた七年戦争・フレンチインディアン戦争から書き起こしているのが特徴です。
で、この戦争からアメリカ独立戦争を語ることによって、何故独立運動が燃え上がったのか、何故イギリスがあれほど課税にこだわったのかが理解しやすくなっています。実際、課税問題には、収益が悪化していた東インド会社の問題や、七年戦争でかかった莫大な戦費の問題とかがあったのですが、独立戦争だけに焦点をあてると、これらの問題というのは見過ごしてしまいますね。
他にも、当時の英国の問題、まだ国王としての影響力があった時代の英国王ジョージ3世の心のうち、「アメリカの問題はドイツで解決する」という言葉に代表されるワールドワイドな情勢の推移など、今までいまいち理解できなかったアメリカの”外”の動きが分かって非常に興味深いです。
独立戦争自体の推移は前半はほとんどなく(上巻はほとんど七年戦争・課税問題の記述で占められている)、後半つまり下巻だけになっているのは「アメリカ独立戦争」という本の題名にしては奇妙ですが、私は気になりませんでしたね。むしろ上巻のほうが興味深かった。
で、これを読んでの感想ですけど、米大陸を失った欧州が、それまで手をつけていなかった極東アジアを狙うようになったのは歴史の必然、ということですね。彼等にとって収益をもたらす地はもうそこしか残されていなかったのですから。
20世紀最大の謀略 赤軍大粛清
ルドルフ・シュトレビンガー 著 守屋純 訳
学研M文庫
いや〜学研M文庫は罪な本です。私のような人間にとっては。
毎月新刊が出るたんびに買い漁っております。で、本書の中身ですが、タイトル通り第二次世界大戦直前に行われたソ連軍の大粛清についての本です。ただ、この本が重点を置いているのは、粛清の中身というよりは、何故粛清が起きたのか、について書かれています。「20世紀最大の謀略」というサブタイトルからもそれがうかがえますね。当時のソ連における権力闘争、SSの暗躍、謀略発動、粛清までがこの本に収められています。
それにしてもおそろしいのは、スターリン自身の執念深さもそうですが(だからあれだけの権力を集める事ができたのだろう。その権力を振るって、業績を残して死んでいるのだから畏怖すべき人物ではある)、ソ連自身の底知れぬ力ですね。最初、亡命ロシア人組織の中のソ連スパイについての記述があるのですが、ロシア人は亡命していても命の安全など保障されず、ソ連の工作員によって消されていく有様が書かれています。
あと、興味深かったのは当時の「大国以外の」国のあまりの地位の弱さです。ハイドリヒが作成した偽のソ連クーデター計画をソ連に伝えるため、チェコスロバキアの要人が暗躍するわけですが、チェコスロバキアがドイツやソ連に対してとるへりくだった態度は「なにもそこまでせんでも」とも思ったりもします。
でも、この本を買った一番の理由はそんな歴史の裏事情などではなく、単にハイドリヒとシェレンベルグの写真があること、それだけだったんですが(爆)
R.O.D
READ OR DIE
YOMIKO READMAN "THE PAPER"
倉田英之 著
集英社 スーパーダッシュ文庫
いや〜ひさびさに買ってしまった。ライトノベルズ。あ、もちろんスニーカー文庫から出ている林譲治先生のガンダムものは除いて。え、除いてもガンパレード・マーチ(出版社不明)は買ったな。縁切れてない…のか?
一応、分類としてはスパイアクションに入るの?かね??大英図書館特殊工作部のエージェント「読子・リードマン」(なんちゅう名前じゃ)が、世界あらゆる所で繰り広げられる本に関する謀略に手をつっこみ首をつっこみ…という話です。外見は野暮ったい普通の女性である読子ですが、そんな彼女の能力は「紙使い」。紙を自由自在に操り、ある時は銃弾を防ぎ、またある時は鋼鉄を切り裂きとやりたい放題やってくれます。
しかし、彼女を一言で表すとすれば、それは「愛書狂」(ビブリオマニア)の一言に尽きるでしょう。いつ何時といえども本を手放さず、滅多に手に入らない希書を見ると我を失い、書店にいけば金の続く限り本を買いあさる…ケースこそ違えど自分との同類項が見出せるのは気のせいか?気のせいだろう。
そこには「筋肉令嬢一〇〇万ボルト」というタイトルの、ノベルズが置かれていた。著者の名前は筆村荒。読子が愛読し、新刊は必ず買う作家の一人だ。
「あうう〜〜」
読子はへなへなと、その場に崩れ落ちた。
「どうしてこんな日に、新刊が出てるんですかぁ〜〜神様の、バカぁ〜」
ごく一部を抜粋しましたけど…いやだぁ〜〜〜人事だとは思えん…
大本営参謀の情報戦記
情報無き国家の悲劇
堀 栄三 著
文春文庫
作者は太平洋戦争中にはじめて参謀になった、若手の参謀の一人です。そんな参謀が情報関連の参謀となり、どのようにして情報戦のエキスパートとなったかが語られています。この本の中では、陸軍の視点から見た太平洋戦争がひととおり描かれているわけですが、中央と前線の認識の違い、戦場に関する情報の不足、誤認による誤った作戦指導などがつぶさに描かれています。例えば、
等の実例が記されています。また、「情報」を取り扱うことがいかに難しいかについてはさらに細かく描かれています。いわく、
こういう教訓が各所に散りばめられています。特に、テニアンに展開した奇妙な番号の飛行隊、その目的が分からずにあれこれ悩みそれが原爆攻撃部隊だということを攻撃までに余地し得ず、さらに原爆投下直後に暗号解読が成功して目的が分かったという話は、情報戦の大切さ・難しさをまさに表していると思います。個人的に「ストロングバイ」の格付けを付けます。この本には。
P.S.
この本、珍しく大島駐独大使が「いい人」です(爆)
カエサルを撃て
佐藤 賢一 著
中公新書
「カエサルを撃て」
この男が全てだった。ローマ軍には勝てる。勝てないのは、ガイウス・ユリウス・カエサルという、たったひとりの男なのだ。ローマ軍を幾千度打ち負かそうと、カエサルを生かしておくなら、ガリアに明日など来るはずがない。なれば、雑魚は捨ておけ。幾十万の大軍を擁しながら、その全てを犠牲にしても構わない。かわりに、カエサルを撃て。躯の山とひきかえに得る戦果は、この男の禿げた頭ひとつでいい。
「カエサルを撃て」
(本文より)
フランス系のノンフクション?で名を知られる佐藤賢一氏の作品。引用からも明らかなとおり、この物語の部隊はカエサル「ガリア戦役」で語られるローマ軍のガリア遠征が舞台。それも、クライマックスに入った部分のガリア一斉蜂起〜アレシアの戦いまで書いてあります。主人公は「フランス第一の英雄」ヴェルチンジェトリクス。
ヴェルチンジェトリクスが主人公で、題名が題名ですからカエサルは当然悪役ということになるのですが、これが主人公を食ってしまうばかりの素晴らしさです。ローマの政情に煩悶し、自らの薄い頭髪を気にして、外見を気にするいわば「俗物」なのですが、ヴェルチンジェトリクスという大きな壁にぶち当たるに至り、これを乗り越えてやろうと思い克己する様は吉川三国志の曹操を見ているようで出色の出来です。
かたや主人公のヴェルチンジェトリクスも、乱暴放埓を楽しんでいるかと思いきや、偉大な父親の重圧に苦しめられ、禿頭の中年であるはずのカエサルから略奪してきた彼の妻をなびかせることもできず、遂に父親とカエサルを同一視するようになります。そして、彼は「父親殺し」を成し遂げるためにアレシアの地でカエサルを倒す作戦を発動させるに至るのです。
この二人を軸とした人間模様もそうですが、ガリアの風景・風俗等の描写も一級品で(もちろんローマ軍の土木工事も)ガリア戦役についての知識がある人ならさらに楽しめることでしょう。普通の人なら、ガリアの祭や習慣はほとんど知らないでしょうから。
でもねぇ、一番楽しいのは塩野七生の「ローマ人の物語」と並べて読むことでしょう。書き方がまぁ正反対です。でもカエサルはやっぱり偉いのだ。なんでだろう。