コスタリカ
Apr. 28, 2002
明神の見事なシュートで先制しながら引き分けに終わったコスタリカ戦は、実に惜しかった。
ところで、このコスタリカという国名、近頃よく耳にする。たとえばあの鈴木宗男議員は、前回は比例区選出だったが、もし自民党にいたら、次回は選挙区から立候補することになっていた。これを「コスタリカ方式」と言うらしい。また、東京大空襲の記録を続けている早乙女勝元氏の娘さんが、この国について本を書いてるらしい。なんでも軍隊のない国なんだそうな。憲法で戦争放棄、軍備不保持を謳いながら、しっかり軍隊を持ってるどっかの国とは随分違う。
このように、この中米の小国は日本といろんな意味で縁があるようなんだが、しかしコスタリカを知ってる日本人は少ないように見受けられる。
いや、人のことは言えない。筆者もたいして知ってるわけじゃない。ただ、一度だけコスタリカ人と会ったことがある。
かれこれ20年も昔になろうか。新幹線に乗ったら隣の席がガイジンだった。禿頭髭ヅラのオヤジだった。検札に来た車掌に
"Fujiyama?"
と聞いていた。車掌は簡潔な英語で説明して去って行ったが、6月末だったか7月始めだったかの梅雨どきで、朝から東京はしとしと雨だった。
「コノ時期日本、雨期ナレバ、富士ヲ見ル能ワザル可シ。」
かたことの英語でそんなふうなこと、言ってやった。
「吾、日本初見参ナレバ、富士見ルヲ欲ッスナリ。」
と言ってはにかんだ禿頭髭ヅラは妙に可愛らしかった。
それだけ、のつもりだった。ところが、・・
列車が富士川の鉄橋を渡ったとたん、空は嘘のように晴れ上がり、眼前に大きな夏の富士がその姿を現したではないか!
「汝、幸運ナリ(You are lucky)!」
オヤジの喜ぶまいことか!一生懸命写真を撮っていた。
それから、仲良くなった。
聞けば、コスタリカから来たと言う。しかし筆者にはピンと来なかった。
「南米?」とか聞いたように記憶している。いや中米だと言う。
「コスタ」は英語の coast だろうと、想像できた。聞いたらやはりそうだと言う。ぢゃあ、「リカ」は?と聞いたら、rich と答えた。なんでも昔、コロニーの中枢がグアテマラにあって(この名のコーヒーを筆者は昔から好きだった)、そのグアテマラからは、「リッチな海岸」に見えたんだとか、そんな説明だったように記憶している(なにしろ昔の話で、正確な記憶ではないかもしれないが)。ちょっと、マルコ・ポーロの「黄金の国ジパング」を思い出して、そんなとこにも親近感を覚えた。
「吾、酒精燃料(alcohol fuel)ノ研究者ナリ。」
と名乗った。
「日本人、前大戦時、甘藷ヨリ生成セシ酒精ニヨリ航空機飛バシタリ。」
などと自慢してしまった。自分にそんな愛国心みたいなものがあると知ってびっくりした。
「吾国人、砂糖黍ヨリ酒精ヲ得。多ク燃料ナラズ。飲料トス。此らむ酒ナリ。」
なるほど。「カリブの海賊」の酒やんけ。
金持ちらしかった。
「吾、やまはノぼーと有ス。ほんだノばいく有ス。時計ハすいす製ナリ。」
と言うから、
「日本製でじたるうぉっち、安価ニシテ正確ナリ。」
と言ってやったが、だめだと言う。
「吾、国ヘ帰ル。電池入手シ難シ。」
そのときはなるほどと思った。しかし、そのとき筆者が持っていた時計は、アメ横で3000円ほどで買ったものだったが、電池交換しないで10年、正確に動いた。コストパフォーマンスは絶大なものである。さすがにあのコスタリカ人も、そこまでは気が付かなかったろう。
彼は京都で降りて行った。二度と会うこともなかろう。たったそれだけのことだ。しかし、今でもよく覚えている。
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