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ブリーズ世界は小型の平面世界
*である。魔法子密度は中程度*で、気候は温暖である。海に囲まれたひとつの円形の大陸によって構成され、大陸面積は約587000000スクエアリーグであった。現在は大戦によって大陸の中央部分などが破壊され、内海となり面積は約280スクエアリーグ*になっている。ブリーズは多種族共存社会であり、多くの種族が混在しながら文明を築いている。もちろん、例外もあり、一部は単一の種族だけで集落を作り、独自の文化を作っている。ブリーズの社会を全体的に見渡したとき、その中心的な種族は人間で、優れたトータルバランスと安定した適応能力で多くの地域に進出している。文明の中で特に主要なものが魔法科学である。魔法科学は魔法子密度が比較的高いレベルで安定している場合に、発達しやすいが、ブリーズはまさにその典型である。しかし、この魔法科学の発展が、逆に基礎科学
*の発展の鈍化に繋がっている。現在の文明が築き上げられる前に、その他の文明が以前にも何度か発生していたが、それらは比較的短期間で滅亡の危機にさらされ、そのたびに崩壊をしている。かつては現在よりも優れた文明が発達していたこともあったが、その多くの遺産は失われている。
その原因の多くは他世界からの侵略によって起きた戦争である。ブリーズ世界は他の世界と比較的コンタクトがしやすい配置と特性をもっている上、気候や魔法子密度の具合から生命の安定した発達にとって良い条件であること、それに伴って良質の魔法原石が眠っている可能性が高いとされ、侵略側にとっての好条件がそろっている。もっとも、他世界からコンタクトに関しては、ブリーズ世界のクリエスの交換量
*が基本的には低いため侵略者が大規模戦力をブリーズ世界に投入させることが難しいこともあり、侵略はすべて奇跡的にも回避されている。侵略の危機はブリーズの世界にふたつの恩恵をもたらしたといえる。ひとつはブリーズ社会の構造の中に、外部からの侵略の危機によって仮想敵が潜在的に常に想定されているということである。人々の中には外部から侵略者が来るという意識は必ずしも強くはないが、そのときに備える意味で、ブリーズ世界内での結束は高く、有事に対して団結をして抗戦を行うことのできる強さをもっている。実際、この連係の強さによって、侵略をねばり強く退けている。もうひとつは侵略者と来訪者を分ける選別眼を備えているという点である。侵略を目的とする人々は宇宙泡のルートを最大限独占しようとしたり、侵略しようとする意識をどこかで秘めている。ブリーズの人々はこうした侵略に対して、直観的に気がつく勘の良さがある。これは来訪者が侵略者に対する抗戦のヒントや助力となった戦争が何度かあり、その記憶が人々の中に息づいている証拠であるといえる。これによって、他の世界から来訪した者に対して、門戸を広く、歓迎する姿勢が維持できている。
ブリーズの歴史は基本的に、他の世界の侵略者に対する戦争の歴史である。ただ、この戦争は短くとも数百年のサイクルで起こる事態で、普段は安定して、秩序が保たれている時代の多い世界である。
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ブリーズ世界の誕生は他の世界の比較的大型の宇宙泡がはじけたことに始まる。大きな宇宙泡アラストリィはその進化の円熟期からついに崩壊期にまで達して、その莫大な力を支ええきれないまでになっていた。そのため、あのとき宇宙泡はその中核を残して、無数に四散し、小型の宇宙泡群となってその世界を分割した
*。多くは宇宙泡群はそのまま、四散した宇宙泡群同士が再び融合し、中型程度の新たな世界を作り、残りは別の宇宙泡と融合をして、全く別の世界を作った。ブリーズ世界はこのどちらの経過もたどらずに四散したときの大きさを保ちながら、改めて世界を再構成した。世界の創世の頃、前の世界の破裂したときの衝撃によって、ブリーズの宇宙泡内部は混沌としていたが、そこから数千年という非常に短い期間で収束していき、中央に円形の大陸と周りに海をもつ世界となった。この時点で、ブリーズ世界はほぼ現在と変わらない地形へと安定していった
*。世界としての安定性を得たブリーズ世界は、その土壌で生命を育んでいた。海には魚が泳ぎ、大陸には植物と昆虫、小動物がその繁栄を謳歌していた。これらの生物たちも比較的早い時期に発達していった。その背景にはこうした生命の原質がブリーズ世界の中に既に含まれていたということが挙げられる。しかし、高度な思考能力をもつ知的生命に関してはまだ誕生していなかった。
ブリーズにこれらの知的生命がもたらされたのは、ブリーズからみると、異なる世界で起こった戦争によってである。
ブリーズが平和と安定を享受していたこの頃、クゥームというブリーズから比較的コンタクトのとりやすい位置にあった世界で戦争が起こっていた。クゥームの魔法子密度は高く、めざましい魔法技術の発展がみられる一方で、災害と戦争による世界内部の混乱が繰り返し行われていた。多くの文明が栄枯盛衰する中で、ある種族がもう別の種族に追いつめられていった。ある種族は現在、ブリーズの世界に多く分布して、大きな影響を与える人間であった。彼らはその知略によって、クゥームの中で生き残りを計っていたが、高度な魔術と高い潜在能力をもつ少数精鋭の魔族の部隊によって駆逐されようとしていた。
人間はクゥームでの抗戦を諦め、異世界への敗走を決定した。このとき、退却先として異世界を探していた彼等が偶然発見したのがブリーズの世界であった
*。ブリーズはクゥームとのクリエス交換速度は比較的遅く、敗走をするのには位置関係として適切であった。加えて、お互いの交換量に関しては低く、高い魔力をもつ魔族の部隊が大規模に追撃していくは不都合の多い地理にあった
*。こうした条件によって人間たちは魔族にその多くを討たれながらも、少数がブリーズの地までに逃げ延びることに成功したのである。そして、人間は魔族に対する抗戦が終結した後もそのままブリーズへと土着して新たな文明の担い手として、ブリーズの世界を牽引するようになった。
人間はブリーズの地に降り立ってから、急速な勢いで文明を築き上げていった。もともと高度な魔法科学と技術をもっていた人間にとって、ブリーズ世界の全土にその勢力を拡大するのは非常に容易なことであった。この古代の人々が造り上げた文明はそのまま現在では古代文明と呼ばれていて、研究の対象となっている。
人間の来訪以来、発展の一途を辿るブリーズは人間以外の来訪者をも受け入れることとなった。エルフやドワーフのような妖精はその典型であった。彼らは来訪した当初こそ人々と対立をして小さな仲違いや戦いをすることもあったが、しだいにお互いの文化の価値を見いだせたことによって共存共栄の姿勢をもつこととなり、ブリーズの世界は多種族がさまざまに混じり合う社会となっていった。
安定した社会として、繁栄を続けることとなった古代の文明であった。ブリーズの世界は温暖な気候と安定した魔法子密度があり、生活をする上でとても条件の良い場所であったことに加えて、この安定した土壌によって生成される良質の魔法石
*が存在すると考えられていた。事実、この良質な魔法石は古代文明を支える大きなエネルギー源となり、人々の生活をより豊かなものにしていった。ところが、この魔法石が、ブリーズの世界そのものを滅亡の危機に陥れることとなった。魔法石はその中に含まれている高密度の魔法子によって莫大な力をそれを使うものに与えるうえに良質な魔法石そのものは貴重である。そのため、この魔法石の存在は他の世界を侵略してでも獲得する価値のあるものと考えられることもしばしばである。その価値は協調共和とは相容れない侵略の脅威をブリーズの世界に与えた。
古代文明が繁栄している間、長期に及んでいた。しかし、この侵略は奇跡的にすべてブリーズの世界側の勝利に終わり、ブリーズが占領という憂き目にあうことはなかった。侵略者は何度もあと一歩というところまで追いつめながら、最終的には抵抗を強くされ、撤退している。これは侵略者側の力不足という以上に、ブリーズの世界そのものの特性によるところが大きかった。ブリーズはその特性として、他の世界とのクリエス交換量が少なく安定している。そのため、侵略側としてブリーズの世界に戦力を投入しようとしたとき、絶対的に移動させられる戦力が限られ、大規模な侵略が難しかった。それに対して、ブリーズの世界ではその侵略に対して一致団結して戦うという姿勢を崩さなかったので、戦力としては常に五分五分といったところで、空間超越という遠征を経て戦う侵略者としては必ずしも有利な戦局へともっていくことはできないでいた。
逆にこの異世界からの侵略はブリーズの世界内部での結束を高める結果となった。侵略者の戦力は決して侮るべきものではなかった。クリエス交換量の限界という制約与えられ、敵の戦力の上限があることで、大規模戦力によって、一気に制圧されるということはなかったとしても、ブリーズの世界の防御にほころびが生じ体勢が崩れれてしまえば、そこを突かれることになる。この脅威がブリーズの内部の混乱を避ける最大の要因となり、奇跡の防衛へと続いたのである。
古代文明期、ある程度、まとまった侵略は数十年から数百年に一度という頻度で行われていた。そのうち少なくとも三回はブリーズ世界の転覆させるところまで詰めていながら、運の巡り合わせ悪く、侵攻作戦は失敗していた。こうした歴史の流れがあって、ある時期を境にこの侵略の魔手が一気に退くということがあった。当時の宇宙物理研究者はこの事態をふたつの解釈をしていた。一方は侵略側の戦力が不充分となったか、他の戦略的地域を発見などで、ブリーズへの侵攻は諦めたか、少なくとも侵攻の重要地域からははずれたという考えである
*。もう一方は侵略側がクリエス交換量以上の戦力を投入できない制約を乗り越えて、大規模戦力を投入しようとしているという見方であった。この見方はある意味で両方正しいものであった。この頃から、世界の外で起きている様子を把握することが必要であると考えられ、宇宙儀や宇宙跳躍システムの利用によって、他世界の動向を知ることに積極的となっていった。
しかし、警戒を強めたとき、既に時は遅かった。その観測システムを通してみた世界はブリーズの世界を死と消滅の恐怖の中へと陥れるものとなった。ブリーズ世界の周りの侵略者はブリーズ攻略を一時放棄して、その他のさらに小型の宇宙泡の征服に乗り出していた。超小型の宇宙泡
*はブリーズの宇宙泡に比べてさらに小さく、大きさも大体1/1000、約300スクエアリーグ程度*である。簡単に掌握できるであったを征服していた。さらに侵略者はブリーズの情報収集網の中をかいくぐって数人の間者をブリーズに送り込んでいた。間者には自衛程度の戦力しか与えられてはいなかったが、巧みな話術と人心掌握術に長けていて、ブリーズ世界の主要な役割を担う人々に近づき、内部から分裂させるという布石を強いたのである。侵略者が超小型宇宙泡インペアティフ
*を完全掌握をして、間者の策略によって、ブリーズの防衛を担うブリーズ連合の人々の中にわずかながらのお互いへの疑念の芽が植え付けられたとき、機は熟してしまったのである。そこからブリーズの世界の崩壊が始まった。その運命の日である。その頃人々は侵略や戦争とは全くの無縁な平和を享受していたであろう。明るい日差しに、心地よい風が吹いていた。
その日の朝、宇宙観測センターは宇宙儀によって仮想平面空間
*の異常を察知した。超小型宇宙泡インペアティフが宇宙泡ブリーズへの直撃軌道を通ってこちらに急速に接近するというものであった。侵略者は超小型の宇宙泡を操り、ブリーズ世界に衝突させ、その衝撃によって世界の転覆を謀ったのである。強大な力をもつ宇宙泡の突撃をブリーズの世界が回避の手段はなかった*。誰もが目をそらし、耳をふさぎたくなるような事態である。ブリーズ連合首脳陣もその対処に困惑をした。情報が首脳陣まで届くのには時間はかからなかった。有事に備えられた観測システムにぬかりはなかった。しかし、その後の首脳の意思はなかなか決定しなかった。学者も研究者も誰に聞いても、宇宙泡の衝突を回避する術についての解答はなかった。生き残る術は退却するほかにはなかった。そのことに気づいたときには宇宙泡の衝突までの時間が迫っていた。このとき、目の前に広がる絶望に、首脳陣は自らの死の恐怖に耐えることはできなかった。首脳陣のかつての連係は自分の保身のためにもろくも崩れていた。間者によって、お互いに疑念が植え付けられたことによってさらに混乱は広がった。あるものは降伏を、あるものは取引を、あるものは退避へと団結心は失われていった。
インペアティフはブリーズの大陸の中央部に衝突。大陸の約
40%が消滅し、ブリーズの人口の約70%がその瞬間に失われた。間伐を入れずに魔族は戦力を投入して、残りの人々を制圧していった。既に指揮系統の機能しない烏合の衆となった人々を圧倒するのに大きな戦力は必要なかった。この後の戦いで、さらに人口の20%が失われ、人々の絶滅の寸前まで追いつめられていった。人々は魔族の統制下に置かれ、魔法石などの魔法資源はそれから十数年にわたり、略奪される運命となっていった。栄華を極めた古代文明はその面影を残すことなく崩壊していった。
人々のネットワークは寸断され、知の遺産はブリーズの世界から抹消させられた。人々は魔族の追っ手を逃れて僻地へと逃れて細々と生存を続けていったが、常に魔族の脅威にさらされることとなった。
魔族は残った人々を完全に駆逐してしまおうとは考えなかった。そのような立場を強くすれば、人々の抵抗は強くなり、またブリーズそのものの意思
*が彼らを助け、自らを危うくするということを知っていたからだ。魔族は人々が反撃する機会を奪うため、その知恵を奪い、歴史を忘れさせることだけに尽力した。侵略統治から
40年が経ち、人々の力は魔族の巧みな策略によって、力を抑えられていたが、徐々に力を取り戻していった。各地で抵抗運動が活発となり、魔族に対抗するべく力を備えた勇者が現れ始めた。勇者はブリーズの意思を実現する力として、その加護を受けて、ゆっくりと人々を解放へと導いていった。魔族は勇者の存在を大きな脅威と考え、その力が集まり大きな流れとなる前に始末する方向で動いていった。既に、このとき、魔族は人々のもとに主権が戻される日を悟り始めていたが、ブリーズの占領によって得られる魔法資源の利権は魅力であったために、その日を可能な限りに遅らせる努力をした。魔族はその精鋭によって、たくさんの勇者の芽を潰し、勇者が中央へと足を踏み入れるのを妨げた。
その努力の成果か勇者が魔族を撃退して、もとの世界へと追い返すまでにはさらに
10年の歳月がかかった。人々が魔族を撃退してから、再興が始まった。既に文明は破壊され、その知識も多くが失われていた。また、魔法資源に関してもその多くが長年の魔族の収奪によって疲弊しきっていた。決して状況は楽ではなかったが、人々は諦めることなく、その痛手を癒していった。
暗黒時代ともいわれている。この時期は文明の復興に人々が尽力していた。ネットワークがゆるやかに回復していき、文明も発達していった。古代文明ほどの力は決してなかったが、着実に歩みを始めていった時代である。
復興と同時に安定した他世界からの種族の流入によって、力を取り戻していった人々ではあったが、決して過去の侵略の恐怖を忘れていたわけではなかった。魔法資源の多くが失われ、魔族にとって戦略的価値の低下したブリーズの世界ではあったが、まだまだ侵略の可能性は残っていた。古代文明ほどの魔法技術は未だ再生していないこともあって、人々を潜在的に自らの力のなさと、その力の弱さから外からの侵略を改めて受けるのではないかという恐怖も払拭できないでいた。
その力のなさが、人々を帝国主義へと傾倒させていった。強い国
*への憧れと所属が恐怖を拭うものだと信じる人々が現れ、内戦の時代へと進んでいった。逆説的にいえば、内戦をすることができる程度までみこどに再生したということでもある。戦いは国同士の同盟関係を強くして、より大きな戦争へと発展していった。西の大陸では大規模な戦闘が繰り広げられるようになり、多くの国が勃興していった
*。この頃から人間と精霊などの異種族間の交流は次第に乏しくなり、その親密度合いは低くなっていった。最悪の場合は、種族間同士で対立が激化して、戦いによってその優劣をつけようという動きが続いた。この国同士、種族間同士の戦いは長く続くこととなった。この戦いを沈静化は皮肉なことに魔族の来襲によってであった。共通の侵略者の登場によって、改めて各国のネットワークが強化されて、人々は結束することとなった。人々は劣勢の戦力ではあったが過去の記憶によってか、抗戦に成功した。
そして、内戦もひとまずは抑えられることとなり、大規模な戦いのないという意味での平和が訪れた。いまだに一部の精霊と人間の間には対立が残ってはいるものの人間を中心とした多種族社会は完全とはいえないまでも機能を果たしている。
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注釈
*1ブリーズ世界は他世界からみると小さな世界である。大きなものでは惑星と呼ばれる巨大な球形の土地を数百個は抱え、小さなものは
10スクエアリーグ程度の広さしかない。平面世界というのはその世界の中での平地の与えられる、そのひとつの形態。世界は基本的にひとつの宇宙泡と呼ばれる球の中に内物質と呼ばれる物質が存在している。この内物質はその宇宙泡の特性によって、ある一定の方向に寄ることになるのだが、平面世界の場合は内物質が一方向、ここでは下方に引かれ、宇宙泡の下半分を内物質が埋めることになる。内物質の沈殿した部分とそれ以外の空の部分に分けられて、その分かれ目が平地となる。平面世界では地平線の果てには宇宙泡の壁が存在するので、その先を超えることはできない。*2魔法子密度は低いとその世界は膠着してゆっくりと発展するか止まった世界となる。高いと世界は急激な発展を遂げる一方で、進化過剰によって内部崩壊する可能性が高くなる。
*3地球単位で、1リーグは1メートル。大戦以前はマダガスカル共和国程度あったブリーズ世界は現在はグレートブリテン程度の大きさになっている。
*4魔法科学に対して、基礎科学。基礎科学は魔法子による魔法の理論を用いない科学の基本形で、魔法科学はこれを土台としている。ブリーズ世界では魔法科学そのものの研究が盛んであるが、その基本である基礎科学への関心が少なく研究は遅れている。基礎科学は不安定な魔法子の影響がなく、安定した結果が得られることで非常に意味がある。
*5世界と世界、つまりある宇宙泡と別の宇宙泡をつなぐ橋はルートと呼ばれている。このルートはクリエス交換速度とクリエス交換量によって定義され、その大まかな値は宇宙泡間の親密関係と個々の宇宙泡の特性によって決まるが、その値は常に動いている。クリエス交換速度とはある魔法子が宇宙泡の間を通過するときにかかる標準的な時間で、クリエス交換量は単位時間あたりに魔法子が移動することのできる量的な大きさである。交換速度と交換量が多いほど、その宇宙泡同士は親密な関係であるといえる。
*6宇宙泡の破裂は泡の成長の過程の中では最も劇的な瞬間である。宇宙泡は基本的に他の宇宙泡とお互いに関係を保ちながら、自らの活動する力を増加させていく。その手段は他の宇宙泡の力を吸収して力の絶対量を高めることと、自らの宇宙泡の力の効率的な運用を身につけて、より質を向上しようとすることである。この吸収と錬磨がある一定段階に達して、成長限界に近づいたとき、宇宙泡は自らのあまりある力をもてあますようになる。そこで新たな成長の可能性を求めて、自らの宇宙泡を分割して、旅を始めるのである。この意味で、破裂は宇宙泡の死を表すものではなく、破壊とそれに続く再生という一連の過程として位置づけるべきであろう。
*7世界の形成が短期間でなされる背景には、ブリーズ世界が過去に帰属していた宇宙泡に対する記憶が残しているためである。宇宙泡の多くは過去の姿に基づいて、安定しようとすることが多く、特に破裂した直後の宇宙泡ではその傾向は顕著となる。この場合、安定の形に対して、大体の目安があるので、その目安に従って安定状態まで短い期間で移行できる。このような経過をたどった、ブリーズの世界はもともとその一部であった宇宙泡アラストリィの何かしらを形見にしているということでもある。
*8このとき、人間がブリーズを探し当てるために用いたのが宇宙儀と呼ばれる観測装置。通常、異世界は直接的に探し出すことができないが、宇宙泡の間を行き来する魔法子の流れを相対的な方法でくみ取り、別の世界がどこにあるのかを推測することができる。魔法子そのものを私たちはみることができないが、その流れと意思の力を感じ取ることはできる。そのことを利用した装置である。
*9世界の跳躍を人為的な方法で行おうとすると、膨大な力を必要とする。それはちょうど、大海を泳いで渡ろうとするようなものである。ところが、世界と世界の間にはもともと魔法子が行き来するという流れが存在している。この流れに乗ることによって、宇宙泡間の移動を比較的少ない力で行うことができるが、それでもまだ多くの力を必要とする。
*10魔法石は魔法子が高密度に集合して結晶化したものである。良質の魔法子の生成される条件は、安定した魔法子密度と活発な意思の交流である。魔法石が生成されるためにはその核となるものとその周りに適当な量と質を備えた魔法子があることである。この魔法子が核を中心に一点に集まることによって、魔法石となる。
魔法子密度が低いと魔法石は結晶化するほどに強い結びつきをもたないので生成されない。逆に魔法子密度が高い場合、魔法子は活発に活動を行い、結晶のような安定した形で定着することもない。
魔法石はそれを使うものに莫大な力を与える。
*11これはブリーズ世界の多くの研究機関には宇宙跳躍のシステムや宇宙儀といった他の世界の情報を得るための手段を多く備えていたが、それを始動させて情報を得ることに力を注ぐよりも、侵攻してきた敵を確実に撃破する防衛戦力に重点を置いていたことにあった。というのは宇宙跳躍システムも宇宙儀も起動には大きな力を消費するためにとても継続的に使用することはできなかった。これらが用いられるのは特別な事情があるときか、侵略の危険性が高まったときに防衛戦の対策を立てるといった目的があるときぐらいであった。
*12小型宇宙泡の多くはそこに内在している魔法子の絶対量も少数になる場合が多い。そのため、異世界とコンタクトするとき、そのクリエス交換速度やクリエス交換量は極めて小さくなるが、それ以上にこの交換量への決定権も小さくなる。つまり、小型宇宙泡にあるのは少ない魔法子であり、その少ない魔法子には意思を反映させる力が不足しているということである。そこで相手方の強引なクリエスの移動を咎める力がないため、このような蹂躙を甘んじて受けなくてはならない。
*13この程度の宇宙泡では、内部に知的生命を抱えている場合は非常に少なく、征服も非常に容易となる。その資源もまた非常に小規模となるのはいうまでもない。
*14侵略者命名
*15宇宙泡と宇宙泡の位置はルートと呼ばれる橋のようなものでお互いに結びついている。ルートはクリエス交換速度とクリエス交換量のふたつの要素によって成り立っている。
もともと宇宙泡と宇宙泡の間には多次元宇宙空間と呼ばれる空間が存在しているのだが、どんなに多次元な世界でも、世界と世界のその相対的な位置関係は即ち、2点間の距離と方向性によって決まる。仮想平面空間はこの宇宙泡と宇宙泡の相対的な位置を平面という仮想の形に置き換えたものである。なお、仮想立体空間はこのこの宇宙泡と宇宙泡の相対的な位置を今度は立体の形に置き換えたものである。
*16クリエス交換量はふたつの世界の間の関係によって基本的に決定する。そこで、一方の受容量が低い場合、全体の交換量も低下してしまう傾向がある。つまり、一方がクリエスの交換を拒絶する傾向にあるとき、もう一方の宇宙泡もたくさんのクリエスを送り込むことはできないのである。逆に一方のクリエスの交換量が非常に高い場合、相手の宇宙泡の状態にかかわらず、交換を活発にさせる。ある一方に莫大な力が備わっているときは宇宙泡もそれを拒絶することは難しいのである。宇宙泡そのものが他の宇宙泡へ衝突してしまうようなとき、その力はクリエスの交換量の基本原則を超えた莫大な力が支配している。宇宙泡が衝突を拒絶するように働くクリエス交換量の力もその軌道を変えるほどの力にはならないのである。
*17世界のあり方は、その世界そのものの意思が少なからず反映されてる。世界そのものの意思は自らの理想を実現するものに力を与え、その敵となるものの力を奪うように働いていく。その力は直接的なものではないが、確実に作用するものと考えられていた。魔族は自らが侵略者であり、この道理に反していることをよく理解していたので、この意思の力が極力及ばないように穏やかに世界の力を吸い出すことを心がけていた。
*18規模とその性質からいえば、都市国家というようなものである。
*19『未完の世界』に記述されるアン戦争がその例である。